HPV
HPV(高リスク・低リスク)
HPVとは
HPVは「ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス、HPV:human papilloma virus)」の略です。HPVには100種類以上の型があり、そのうちの約40種類が性器周辺に感染します。HPVの一部は子宮頸がんや陰茎がんとの関連があるため、現在HPVは「高リスク型」と「低リスク型」の2種類に分類されています。
どちらのHPVも主に性交渉などによる粘膜接触によって感染しますが、性交経験のある女性の多くがこれに感染すると言われています。その多くが一過性のものであり、体の免疫力によって自然にウイルスが排除され消失すると考えられてきました。しかし、一部のケースではウイルスを排除できず、感染が持続することで病気になると考えられています。
高リスク型と低リスク型のHPVについて
HPVに感染しても、ほとんどの場合において自然消失します。しかし、高リスク型のウイルスへ長期間感染すると子宮頸がんのリスクが高まります。また、低リスク型のHPVが原因で性器周りにイボができる「尖圭コンジローマ」の症状が現れることがあります。
高リスク型HPV
種類…13種類ほど
発症する可能性のある疾患…子宮頸がん
低リスク型HPV
種類…9種類ほど
発症する可能性のある疾患…尖圭コンジローマ
症状
高リスク型(子宮頸がん)
高リスク型HPVへの感染自体に明確な自覚症状はありません。持続感染を経て子宮頸がんが生じ、それが進行することで初めて以下のような自覚症状が現れます。
- おりものの異常(量が増える、臭いが強くなる、など)
- 不正性器出血・性交時出血
- 性交時痛
- 骨盤痛、腰痛 など
※上記の症状に気がつかないほど軽度である場合もあります
低リスク型HPV(尖圭コンジローマ)
低リスク型HPVへの感染によって性器やその周辺にイボが生じることがあり、これを「尖圭コンジローマ」と呼びます。イボは先が尖っているのが特徴で、「鶏のトサカ」「カリフラワー」のような形状をしています。
イボ自体に痛みはありませんが、稀にかゆみが生じることもあります。尖圭コンジローマの症状が現れている状態での性行為は、感染を広げるリスクを伴いますので注意が必要です。
- 外性器・膣内・肛門にイボができる
- イボのかゆみ など
※膣内のイボは自覚できないことがほとんどです
感染経路
性器周辺に感染するHPVは、性行為時に粘膜にできた傷などからウイルスが体内に侵入することで起こります。感染自体は容易に起こるため、性行為の経験がある女性であれば、多くの方が一度は感染するといわれています。
また、HPVは男女ともに性器周辺のさまざまな場所に潜んでいるため、コンドームで完全に防ぐことは困難です。
潜伏期間
3週間~8か月程度(低リスク型)
※高リスク型HPVの潜伏期間は、現在のところはっきりと分かっていません
診断・検査
HPVへの感染自体では症状は現れませんが、子宮頸がんのリスクがある場合、あるいは尖圭コンジローマの症状が現れている場合には検査・治療を行う必要があります。
子宮頸がん
問診で症状などを伺い、視診や細胞診を行って診断します。細胞診の際は専用の器具を使って子宮頸部から組織を採取しますが、ほとんど痛みはありませんのでご安心ください。
尖圭コンジローマ
性器周辺に特徴的なイボが生じるため、視診によって診断します。場合によっては、部分的に切除して、病理学的な診断を行います。
治療
子宮頸がん
子宮頸がんの原因となるHPVへの感染は、ワクチン接種によって予防することが可能です。とくに性交体験前の接種によって大きな効果が期待できます。ワクチン接種をしても、すでに感染してしまったHPVへの治療効果は残念ながら確認されていません。しかし、ワクチンを接種することでまだ感染していないタイプのHPVの将来の感染リスクを減らす効果を期待して、ワクチン接種をお勧めします。定期接種となっていますので、公費による接種が可能です(公費接種が可能な年齢には制限があります)。
※子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの接種について→https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000115714.html
なお、子宮頸がんの治療では手術や放射線治療、抗がん剤治療などを行います。当クリニックの診察で子宮頸がんの治療が必要と判断した場合には、適切な医療機関をご紹介させていただきます。
尖圭コンジローマ
塗り薬による治療、あるいは外科治療を行います。外科治療としては、以下の方法があげられます。
- 電気メスによるイボの切除
- 炭酸ガスレーザーによるイボの蒸散・焼灼
- 液体窒素によるイボの凍結凝固